今まで読んできた本をたどってみる

 

はじめに

こんにちは。

 

この記事はWathematicaのアドベントカレンダー、12/10(Sun)の記事です。

 

このブログを更新していない間にサークルの会計を務めるようになり、合宿を行うなど、様々な出来事がありました。

 

その流れの一つとして、今回のアドベントカレンダー企画が今年もある、というわけで、つまり立場上何か有用な記事を書かねばなりません。たぶん。

 

そう考えた時に、B3にもなったし後ろを振り返ってもよいかなあと思ったわけです。知の前線を目指すサークルですが、達成感のためには後ろを振り返りまくることが重要です。復習にもなります。今回の形だとならないけど。

 

そういうわけで、振り返ってみたいと思います。

 

B1前期

なにも読んでない!

 

B1後期

主に読んでたのは以下の二つです。

www.nippyo.co.jp

www.iwanami.co.jp

 

一冊目はいわゆる赤雪江ですね。

そもそも剰余群がよくわからなかったりとか、準同型定理の意味が全く分からなかったりとか。いろいろ思い出深い本です。演習のブリューア分解に1か月苦しめられたこともありました。ブリューア分解、今見たら研究室のセミナーの本にある。すごい。

夏あたりでWathematicaに入ったので、ゼミで読み進めていった気がします。最初はまあまあなるほどねという感じでしたけど、もう4章くらいになると力尽きてた気もします。ちゃんとしたノートは位数12の群の分類の手前で止まってます。こんくらいでもなんとかなります。数学。

www.nippyo.co.jp

参考になった本で言うとこれはよかったです。赤雪江でよくわからなかったところをこれで見たりもしました。いい本です。独学ならこれ読んでもいいと思います。行間が全くない。(群のコホモロジーのところはちょっとだけあるけど...)

 

二冊目は略称知らないやつです。

これもゼミで読みました。順番おかしいですが、サークル入って一番最初に読んだ本です。なんか「友達が夏休みで読んだって言ってた」みたいなのをサークルの人から聞いて怖かった思い出。ほんとか?

いわば「初学者向けでかつ最速で留数定理に到達する本」だと思います。なんていうか「複素解析」ではなくて「複素関数論」です。要するにεとってδ取ってみたいな議論があんまりない。代数。

その分非常にとっつきやすいんですが、厳密性が犠牲になってることはあります。例えば一致の定理って連結性の厳密な定義がないとちょっと困ると思うんですが、そことか少し適当です。さらに言えばB1で読んでた時に気づかなかっただけでもっと適当な部分はあると思います。まあそれでも複素関数論の面白さは伝わるし...いい本です。エッセンスが書いてある。

あと数学科向けとしては少し物足りないかも。偏角の原理とかは本書のレベルを超えるもの扱いになってます。でもリーマン面の議論でも行けること多いしいいか。よくないか。

 

参考になった本で言うと以下があります。

www.utp.or.jp

無限積の議論とか参考にした気がします。

ゼミで読んで解析っぽくなかったと話しましたけど、正直後半はε-δでゴリゴリやりたい!という気持ちもあり、証明で不可解なところがあると参照しに行ってた気がします。

 

あとこれはネタバレなんですが、この本最後ヤコビ三重積で終わるんですよね。そこがまあ変な言い方すれば尻切れとんぼって感じで、楕円関数論めちゃくちゃやりたくなりました。しかし今に至るまで体系的にはやってない。なぜ...

 

そうこれね みんな読んでください 読んで何かいてるか教えて

www.utp.or.jp

 

 

これも読んでた、で言うとこれ

www.kinokuniya.co.jp

 

正直お気持ちがなんもわからんかったので印象がない...。

お気持ちって話ではないのかもしれないが、こう...触れておくだけでいいかなって...。

 

B2前期

サークルに本格的に関わりだしたので、「新歓ゼミ」(新入生を歓迎し、ゼミをさせる)の一環で杉浦解析を読むことになりました。

 

www.utp.or.jp

解析まともにやれてるのはこれのおかげといっても過言ではないと思います。マジで行間がないので、モチベがあれば読める本ではあります。ありますが、なんかこうのぺーっとしているので...ゼミで読もう。でもゼミで読むと行間ないからまとめる能力が問われる。

あと演習は普通にきつい気がします。僕がダメなやつなだけですか?そんなことないですよ 失礼な

 

これもちょっと読みました。4章まで読んで、ゼミが終わったのでそこまで...。

対角化が何か知ってれば読める、という感じだったので読み始めやすかったです。

有限群の表現論くらい手を付けねばと思いつつ、今まで保留に....

www.utp.or.jp

B2後期

位相空間論を講義でやったので、いよいよ幾何学ができる!となりまして、選んだのはこちら。

www.shokabo.co.jp

 

よい本です。実はまだ読んでます。

これも行間が全くない形の本です。

最初のベクトル解析とド・ラームコホモロジーのところでみんな1回感動するんだと思います。

上に記した通りモチベートの仕方もよくて、ワクワクさせてくれます。

いい点の裏返しになってしまいますが、難点としては「命題」がやたら多いです。つまり「定理」が全然出てこないので、1個1個ちまちま読んでると流れを見失う気がします。僕は1周目だしまあ良いかなと思って気にせず読んでますが...。

 

www.nippyo.co.jp

 

赤雪江にキリがついたのでここらで読み始めた気がします。ガロア理論ってみんなやってみたいですよね。

ゼミで読みました。一章の環論は楽しく読めたんですが、加群のモチベーションがイマイチわからず...。

今頃になって平坦性とか大事ですねになってます。

 

https://dept.math.lsa.umich.edu/~wfulton/CurveBook.pdf

 

上に引き続いて、W.Fulton "Algebraic curves"も読みました。

いわゆる古典代数幾何の本ですね。可換環論の知識は途中で補っていってくれるので、とても読みやすかったです。「手を動かして学ぶ代数幾何」って感じでした。

これも途中で止まってます。飽き性すぎる。

 

www.kyoritsu-pub.co.jp

素数定理に興味がわいたので、Twitterで薦められたこの本を読みました。

行間開きがちな本を初めて読んだかもしれません。ひたすら評価!評価!評価!という感じだった気がします。整数論でもこんな解析ゴリゴリになるんだ、とびっくりしたのを覚えています。

 

B3前期

www.mheducation.com

 

確か上の本でルベーグの収束定理が出てきて、どうせなら証明しておきたいな、と思ったのが読み始めたきっかけだったと思います。

まあなんていうか「これ読めるほど数学力ないよ君」と言われているようで苦しかったですが、Mathstackexchangeとにらめっこしながらどうにか読んでます。

測度論と関数解析の初歩と複素解析がまとまった本なんですが、後半(複素解析)を読んでいる人はあんまり見ないような...?

ルベーグ測度の構成は後に回して、まず一般の積分論を述べて、「ルベーグ測度とは実数体Rを加法についての位相群と見た時のハール測度のことである」のノリでルベーグ測度が構成されます。つまり確率論やりたい人には向かない本です。

ただその構成のおかげでモチベーションは保ちやすい気がします。

 

www.nippyo.co.jp

 

複素解析2冊目。二周したら理解度が深まる気がしましたのでこれを...。

これ内容がすごく豊富でいいですね。位相空間論が仮定されてるっぽい書きぶりですが、ユークリッド空間のそれなので知らなくても読めます。楕円関数論まで書いてあって、研究室のセミナーでも少し助けられました。

link.springer.com

合宿で代数的トポロジーをやろう、という話になり、一章をパラパラ読んで読みたくなったのでこれに。多様体論への応用が最速って感じで、モチベーション保ちやすいです。

ただ特異ホモロジーから入るので難易度高めかも。気合で読みました。

 

B3後期

link.springer.com

複素解析多様体を混ぜると複素解析がよくわかるらしい、で読み始めた本です。

なんていうか「複素解析は幾何!」と言いたくなる本です。

とりあえず解析接続と被覆ガロア、有限性定理の辺りを目指してます。

予備知識も複素解析位相空間論だけなので、リーマン面に興味があればぜひ。

 

www.asakura.co.jp

 

院試勉強の一環で胞体分割をやらねばならぬ、ということでこれを。

とても読みやすいです。それはそれはとても...。

3章から読んでますが、とにかくストレスフリーです。

 

終わりに

読み切った本ほぼ無いことに気づいてしまいました。まあ読み切ることでなくて知識を得ることが大事なので...。

今気になってる本としては

www.cambridge.org

とかもあります。あと応用数学とかもやってみたいよね...。

もう一つ記事を書く予定なので、そちらはちゃんと数学のことを書きたいですね。

 

 

 

 

 

 

Feynmann's Integral Trickとかいうやつ

 

はじめに

Wathematica アドベントカレンダー企画の一部です。

アドベントカレンダー、理系なのになんでクリスマス祝ってんの?とかいう自爆みたいなツイート流れてきて震えたことあります.だいばくはつ.

締め切りの10時間前に書き始めてます.

もう一個書きたいのあるので、かけたら書きます.

導入

変な積分を求めたいことってありますよね.

大学に入ると最初にその機会(?)が訪れるのは留数定理とかのところだと思いますが、それはみんな知ってると思うので、それ以外で求めたい.

あと,留数定理はlog入ってるとなんか扱いにくい気がするので、その代替を用意しましょう,というモチベーションもあります.

知識は微積分のやつがあれば大丈夫です.簡単な記事!

微分積分を何の断りもなく入れ替えるので、注意してください.

(適当に優関数をとって正当化してください.)

最初の例

 \int_0^1\frac{x^2-1}{logx}dx

を求めることを考えてみます.

まず,

 G(t)=\int_0^1\frac{x^t-1}{logx}dx

とおきます.

つまり, G(2)を求めればよいわけです.

ここで,

 G'(t)=\int_0^1\frac{\partial}{\partial t}(\frac{x^t-1}{logx})dx

 =\int_0^1x^tdx

 =\frac{1}{1+t}

なので,

 G(2)=\int_0^2\frac{1}{1+t}=log3

を得ます.

次の例

 \int_0^{\infty}\frac{\sin x}{x}dx

を求めることを考えてみます.

なんかいい感じに収束して、積分が簡単になるような関数を考えたいので,

 G(t)=\int_0^{\infty}\frac{\sin x}{x}e^{-tx}dx

と置きます.

 G'(t)=-\int_0^{\infty}e^{-tx}\sin xdx

となるので,この右辺は普通に計算できて,

 G'(t)=-\int_0^{\infty}e^{-tx}\sin xdx

 =-\frac{1}{1+t^2}

となって,

 G(t)=-\rm{Arctan}(t)+C

を得ます.

 t\rightarrow\inftyとして考えると, C=\frac{\pi}{2}なので,

 G(0)=\frac{\pi}{2}

を得ます.

おわりに

みじけ~~~~~~~~~~~~!!!!!!!

なんだこれ.

後でちゃんとしたの書きます よろしくお願いします

というかVSCodeに慣れてるとhatenaのTeX書きにくくてしょうがない.

次からPDFにします.

 

Feynmann's Integral Trick,なんか英語圏だと有名っぽいですね.

日本だとたぶん有名だけどあんまり名前が浸透してないっぽい.

ちなみに、Feynmannがこの手法を好んだだけで、別にLeibnizとかでもやってますよね.

これ.

おまけ

これ聞いてくれ よろしく

www.youtube.com

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【Wathematicaアドベントカレンダー企画2022】命題論理のコンパクト性と完全性

 

はじめに

こんにちは、かまあげです。うだるような暑さですね。私も茹ってしまいそうです。かまあげだけに。

数学基礎論についてはどのようなイメージをお持ちでしょうか。なんか「不完全性定理」がどうとか、「メタ数学」がどうとか、なんか断片的に聞いたことがあるのではないでしょうか。

不完全性定理に矛盾するので神は存在しない!!!!!!!」とかいうよくわからない主張(?)を見たことがある人もいるかもしれません。これについては諸般の事情によって触れないことにします。なんか怖いし...

 

あと、一応この記事に関しては数学の前提知識とかはありません。「いやタイトルからして意味不明だけど」となっているかもしれませんが、説明するので大丈夫です。

加えて、後半に集合論の知識を仮定するパートが存在していますが、まあ別に知らなくても「コンパクト性」って何?「完全性」って何?くらいは理解できるようにしたつもりです。ちゃんと頭からつま先まで知りたいのであれば集合論の本を買いましょう。松坂集合位相とか。買って衝撃の稲妻を走らせましょう。

ちなみに、緩い議論が散見されると思いますが、一応「数学基礎論入門」みたいなノリで書いたので、軽いノリで読んでくれると嬉しいです。興味を持ったら、キューネンとか最近出たエンダートンの訳書とか買って読みましょう。もっとこう、ちゃんと書いてあるので...。

 

導入

数学基礎論ってなんでしょうか。

いや、私もよく知っているわけではないですが、少なくとも一側面として「証明って何?」ということを掘り下げて考えている、というのがあります。

そしてこの記事では主にその側面について触れます。

一応いうと数学基礎論の守備範囲って結構広いです。まあ公理的集合論と密接にかかわっている部分があるので、そりゃそう、って感じですが...

 

さて、私たちが数学のいわゆる問題を解くとき、「Aという仮定からBが導けて、BからCが導けるから、Cと仮定Dを合わせてEという結論が...」みたいなことをやっていますね。

他方、「Aでないと仮定すると矛盾するからAは正しくて...」とか、「BでないならばAでないから、AならばBで...」とかもやりますよね。

 

この前者をいわゆる「モーダス・ポネンス」な推論と言います。ちゃんと書くなら、

P ならば Q である。
P である。
従って、Q である。

という感じ。「導けてるな~」という感じがしますね。

 

後者はいわゆる「トートロジー的言い換え」とか、まあ単に「トートロジー」とかと言いますね。この用語は後でちゃんと定義しますが、まあ要するに「おんなじこと言ってる」ってことです。「言い換え」です。そしてこの推論そのものはA,Bの内容に関わらず常に正しいですよね。

 

こういうのを記号列とかを用いて定式化しよう、というのが「数学基礎論」の一側面です。「BならばA」であるというときに「Aである」ことから「Bである」ことを導いたら誤りですよね。数学的に「正しい」推論ってなんだろう、ということを定義してみたいわけです。

 

定義など

以下、青字の定義は参考文献[1]に基づきます。

文記号、文結合記号

では、様々な用語の解説をしていきましょう。

 

まず、 A_1,A_2,\cdots,A_n,\cdots文記号と呼びます。

これには、「リンゴは赤い」とか、「塩化ナトリウムの固体は白い」とか、そういう真偽を判定できる文が入ります。「すべてのリンゴは赤い」とか、そういうことを言っているわけではないことに注意してください

 

そして、 \neg,\land,\lor,\rightarrow,\leftrightarrow文結合記号と呼びます。

順番に、否定、かつ、または、ならば、同値(英語でいうiff)を意味します。

これらは文記号と組み合わせて使います。

たとえば、 A_1に「リンゴは赤い」 A_2に「梨は美味しい」という文が入っているとしましょう。

 A_1\rightarrow A_2は「リンゴが赤いなら、梨は美味しい」と翻訳できます。

同様に、 \neg A_1は「リンゴは赤くない」と翻訳できますね。

 

さらに、区切りとして括弧を導入します。例えば

 \neg A_1\rightarrow A_2

という記号列を考えてみると、これは

「「 A_1でない」ならば A_2である」

「「 A_1ならば A_2」でない」

の二つのどちらであるのかよくわかりません。翻訳文で「」を導入しているように、

 (\neg A_1)\rightarrow A_2

 \neg (A_1\rightarrow A_2)

とすれば見分けがつきますね。そういうわけで、「()」を区切りとして導入します。

 

ところで、\neg \rightarrow A_1を翻訳することはできるでしょうか?

うーん、ちょっと難しいですね。 \rightarrowの両隣には文記号が欲しいです。

つまり、「翻訳できる記号列」「翻訳できない記号列」が存在するわけです。

これを踏まえて、「翻訳できる記号列」として整式を定義します。具体的には、

(a) 個々の文記号は整式である。
(b)  \alpha \betaが整式なら、 (\neg \alpha), (\alpha\land\beta),(\alpha\lor\beta),(\alpha\rightarrow\beta),(\alpha\leftrightarrow\beta)も整式である。
(c) (a)(b)を満たす記号列のみが整式である。

とします。

 

真理値割り当て

文記号や整式が与えられたとき、それが「正しい」「正しくない」ということをそれぞれに対して返す写像を考えてみましょう。

以下、文記号の集合は \mathcal{S}とし、 \{F,T\}を真理値の集合とします。

真理値は、ここでは要するに個々の文記号に対して「True」「False」を返すものです。

その頭文字をとっているわけですね。そして、 \mathcal{S}の各要素に対して「正しい」「正しくない」を返す写像を以下のように定義しましょう。

 v:\mathcal{S}\rightarrow\{F,T\}

 A\mapsto T(\text{Aが正しい})

 A\mapsto F(\text{Aが正しくない})

これを真理値割り当てと言います。ただ、これだけだと整式に真理値が定まらなくて微妙ですね。でも、でたらめに拡張するとまずそうです。 v(A_1)=T,v(A_2)=F v(A_1\rightarrow A_2)=Tになったら困りますね。というわけで、良い感じのルールを満たした拡張を考えたいわけです。

以下、 \overline{\mathcal{S}}を、 \mathcal{S}から5種類の文記号操作を有限回行って作れるような整式全体の集合とします。硬い言葉(?)を使えば、 \mathcal{S}が5種類の文記号操作によって生成する集合が \overline{\mathcal{S}}です。

 \overline{v}:\overline{\mathcal{S}}\rightarrow\{F,T\}

を、以下のルールを満たすように定めます。

0. どの A\in \mathcal{S}についても、 \overline{v}(A)=v(A)である。

 

以下では(任意に) \alpha,\beta\in\overline{\mathcal{S}}とします.

 

1.  \overline{v}(\neg \alpha)=T   (  \overline{v}(\alpha)=Tのとき)

 \overline{v}(\neg \alpha)=F   (それ以外の時)

 

2.  \overline{v}(\alpha\land\beta)=T   (  \overline{v}(\alpha)=Tかつ  \overline{v}(\beta)=Tのとき)

 \overline{v}(\alpha\land\beta)=F   (それ以外の時)

 

3.  \overline{v}(\alpha\lor\beta)=T   (  \overline{v}(\alpha)=Tまたは  \overline{v}(\beta)=T(両方でもよい)のとき)

 \overline{v}(\alpha\lor\beta)=F   (それ以外の時)

 

4.  \overline{v}(\alpha\rightarrow\beta)=F   (  \overline{v}(\alpha)=Tかつ  \overline{v}(\beta)=Fのとき)

 \overline{v}(\alpha\rightarrow\beta)=T   (それ以外の時)

 

5.  \overline{v}(\alpha\leftrightarrow\beta)=T   (  \overline{v}(\alpha)=\overline{v}(\beta)のとき)

 \overline{v}(\alpha\leftrightarrow\beta)=F   (それ以外の時)

とすればよいです。真理値表を書いてみれば(つまり、T,Fの可能性をすべて書き出して表にまとめてみれば)この定義の妥当性がわかると思います。

そして、もちろんこの真理値割り当ては各 vに対して一意です。直感的にはそれはそう、という感じですが、これをちゃんと証明することはここではしません。実のところ、それだけで一つ記事が書けてしまいますので...

気になる人は再帰定理、などで調べてみるとよいです。一応、定理として書いておきます。

 

定理1

集合 \mathcal{S}へのどんな真理値割り当て vに対しても、前述の条件 0~5に合致する写像 \overline{v}:\overline{\mathcal{S}}\rightarrow\{F,T\}が存在する。

 

あと少し、定義を書いておきましょう。

真理値割り当て \overline{v}と整式 \varphiについて \overline{v}(\varphi)=Tが成り立つとき、 \varphi \overline{v}充足すると言います。

 \Sigmaをとある整式の集合、 \tauを整式とします。 \Sigma \tauトートロジー的に含意するとは、 \Sigma \tauに現れる文記号への真理値割り当てについて、それが \Sigmaのすべての要素を充足するなら、 \tauをも充足することを言います。 \Sigma\vDash\tauと書きます。

また、ある整式 \tauが、 \tauに現れる文記号へのどんな真理値割り当てについても \overline{v}(\tau)=Tを満たしているとき、 \tauトートロジーであると言います。 \varnothing \vDash \tauですね。

 

健全性、完全性

...さて、ここまで長々と用語の定義をしてきたわけですが、これらを用いて示したいのは「命題論理の完全性」でした。では、健全性と完全性ってそもそも何でしょうか。ここでは一般的な定義を扱うことはしませんが、大雑把に言えば、健全性は「証明できる式は正しい式である」こと、そして完全性は「正しい式は証明できること」となります。ここではこの「証明できる」ことを以下のように定義しましょう。

 

 \Sigmaを整式の集合とする。 \Sigmaからの演繹とは、

整式の有限列\lt\alpha_0,\cdots,\alpha_n\gtであって、全ての k\leq nについて

(a)  \alpha_kトートロジーである

(b)  \alpha_k\in\Sigma

(c)  i,j \lt kを満たす i,j\in\mathbb{N}で、 \alpha_i \alpha_j\rightarrow\alpha_kという整式になっている

( (c)が成立しているとき、 \alpha_k \alpha_i \alpha_kからモダス・ポネンスで得られているという)

ある整式 \tauについて、 \Sigmaからの演繹でその末尾が \tauになるようなものが存在するとき、 \tau \Sigmaの下で証明可能と呼ぶことにする。

 

一つ例を挙げておきましょう。

問2 

 S,P,Rを文記号とする。

 \Sigma = \{\neg S\lor R, R\rightarrow P, S\}

からPが証明可能であることを示せ。

Pを末尾とする演繹を作ればよい。実際、

 \lt S, (\neg S\lor R), ( (\neg S\lor R)\rightarrow(S\rightarrow R) ),(S\rightarrow R),R,(R\rightarrow P),P\gt

とすると、各要素は整式であって、

 S \in \Sigma

 (\neg S\lor R)\in\Sigma

 ( (\neg S\lor R)\rightarrow(S\rightarrow R) ): トートロジー

 (S\rightarrow R):\alpha_2:\alpha_1\rightarrow \alpha_3

 R: \alpha_3:\alpha_0\rightarrow\alpha_4

 (R\rightarrow P)\in\Sigma

 P:\alpha_5:\alpha_4\rightarrow\alpha_6

なので、確かに上記は \Sigmaからの演繹となっている。□

 

次に、以下の命題を示します。

トートロジー的含意が「結論を導いている」ことに対応していることがわかれば、この命題はいわば健全性を示していると言えるでしょう。

 

命題3

\lt\alpha_0,\cdots,\alpha_n\gtを整式の集合 \Sigmaからの演繹とする。

このとき、すべての k\leq nについて \Sigma\vDash\alpha_kである。

証明

kについての数学的帰納法によって示す.

 (i)\ k=0のとき

 \alpha_0は(c)を満たしえないので、 \alpha_0トートロジーであるか、 \alpha_0 \in \Sigmaである。

トートロジーならその真理値は常に Tで、 \alpha_0\in\Sigmaならトートロジー的含意の定義から \Sigma\vDash\alpha_0

 

 (ii)すべての k\leq m-1\ (m\in\mathbb{N})について \Sigma\vDashを仮定する。

このとき、 \Sigma\vDash\alpha_mを示す。

 \alpha_mが(a)か(b)を満たしているときは上記同様にして成立。

 \alpha_mが(c)を満たすとき、 i,j\lt mを満たす等式で \alpha_i:\alpha_j\rightarrow \alpha_mとなっている。 i,j\lt mより \Sigma\vDash\alpha_iかつ \Sigma\vDash\alpha_jなので、このとき v(\alpha_m)=Tである.よって \Sigma\vDash\alpha_m. □

 

次に完全性を示すことにしましょう。その前に、少しだけ用語と、定理を紹介しておきます。

 

整式の集合\Sigmaの要素すべてを充足するような真理値割り当てが存在するとき、 \Sigma充足可能であると言います。

また、 \Sigmaのすべての有限部分集合が充足可能であるとき、 \Sigma有限充足可能であると言います。

 

このとき、一見非自明な次の定理が成り立ちます。

 

定理4 (コンパクト性定理)

整式の集合が充足可能であることと、その整式の集合が有限充足可能であることは同値。

 

系5  \Sigma\vDash\tauならば、有限集合 \Sigma_0\subset\Sigmaで、 \Sigma_0\vDash\tauを満たすものが存在する。

 

そして、これらの証明はおまけに回すことにします。(すこし難しいので)

というわけで、これを用いると完全性が次のように示せます。

 

定理6

 \Sigma\vDash\tauであるときは必ず、 \Sigmaからの演繹で、その末端が \tauであるものが存在する。

証明

コンパクト性定理の系から、\Sigma '=\{\alpha_0,\cdots,\alpha_n\}\subset\Sigmaであり \Sigma '\vDash\tauとなる有限集合 \Sigma 'が存在する。

いま整式 \beta,\gammaが演繹の列に存在するとすると、 (\beta\rightarrow(\gamma\rightarrow(\beta\land\gamma) ) ) トートロジーなので、(c)を繰り返し用いると、演繹の列に (\beta\land\gamma)を置くことができる。

つまり ( ( (\alpha_0\land\alpha_1)\land\cdots)\land\alpha_n) という整式を演繹の列に置くことができて、ここから ( ( ( (\alpha_0\land\alpha_1)\land\cdots)\land\alpha_n)\rightarrow\tau)も置けるので、従う。□

 

おわりに

なんか最後の証明が短すぎて、「コンパクト性定理が偉いだけでは?」となってしまいそうな気がしています。実際偉いんですが...。

ちなみにこの名前の通り、位相空間論のコンパクト性とのアナロジーがあって、実際位相の言葉を用いてコンパクト性定理を示すことができたりします。(参考文献[4]を参照.)

 

あとはどんな疑問が残るでしょうか...。「文記号って可算無限個しかないの?」とかでしょうか。これは僕もよくわかってないのですが、そう言える分野とそういえない分野があるような気がしています。そしてこの記事でそれが問題になるのはコンパクト性定理のところでしょうから、一応おまけの証明は可算無限個でなくても対応できるものにしておきました。しかし実際どうなんでしょう。わかる人いたら教えてください。

 

それともう一つ、これは半分宣伝なんですが、量子論理ってものがあります。

私たちは真理値の集合としてFとTの二元集合を採用したわけですが、これを三つとか、128個とか、可算無限個とか、の集合に拡張したりするらしく、その中の分野の一つに量子論理があるらしいです。誰かがそれで記事を書くというのを風の噂で耳にしたので、書いておきます。

 

おまけ

コンパクト性定理と、その系を示します。Zorn補題を用います。

 

定理4(再掲) (コンパクト性定理)

整式の集合が充足可能であることと、その整式の集合が有限充足可能であることは同値。

証明

\Rightarrowは明らか。 \Leftarrowを示す。

 \Sigmaを整式の集合として、 \Sigmaの任意の有限部分集合が充足可能であるとする。

ここで必ずしも有限でない \Gamma\subset\Sigmaをとる。 \Gammaを含み、かつそのすべての有限部分集合が充足可能であるような集合全体の集合に包含によって順序を導入する。これを \Phiとする。 \Phiの任意の全順序部分集合 \deltaに対して、 \Delta=\cup\deltaとしてその要素の和集合を定める。このとき、 \Deltaは有限充足可能である。

実際、 \Deltaが有限充足可能でない、つまり、ある有限集合 A=\{A_0,\cdots,A_n\}\subset\Deltaが存在してAが充足不能なら、各 A_iに対して、 A_i\in\theta_iを満たす \theta\in\deltaが存在する。 \deltaは全順序部分集合だったので、 \theta_iのうち最大のものを \thetaとすると \Delta\subset\thetaが成立するが、 \theta\in\deltaより \thetaは有限充足可能である。よって矛盾。

よってZorn補題によって \Gammaを含むような極大有限充足可能集合が存在する。これを \Gamma^*とする。いま \Gamma=\Sigmaとすれば \Sigma\subset\Gamma^*であって、当然 \Sigmaも有限充足可能である。□

 

系5(再掲)  \Sigma\vDash\tauならば、有限集合 \Sigma_0\subset\Sigmaで、 \Sigma_0\vDash\tauを満たすものが存在する。

証明

全ての有限部分集合 \Sigma_0\subset\Sigmaについて \Sigma_0\nvDash\tau

 \Rightarrow\ \Sigma_0\cup\{\neg\tau\}が全ての有限部分集合 \Sigma_0\subset\Sigmaについて充足可能

 \Rightarrow\ \Sigma\cup\{\neg\tau\}が有限充足可能

 \Rightarrow\ \Sigma\cup\{\neg\tau\}が充足可能

 \Rightarrow\ \Sigma\nvDash\tau

 

参考文献

[1] Herbart B.Enderton著, 嘉田勝訳"論理学への数学的手引き"

ほぼこれの受け売りみたいなところがあります...。

 

[2] 

dbfin.com

途中参考にしたところがあります。

主に[1]の演習になっている内容を書きたくてこの記事を書き始めたんですが、[1]には演習の解答がないので、一応確認の意味で参考にさせていただきました。

 

[3] 

http://hagi.is.s.u-tokyo.ac.jp/pub/staff/hagiya/kougiroku/ronri/2.pdf

命題論理についていろんなことがまとまってるPDFです。

コンパクト性定理の証明を参考にしました。

 

[4]

https://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~terui/kistec2018.pdf

位相と命題論理のつながりについてのPDFです。全然読んでないので、位相空間論がちゃんと理解できたら読みたい...。

 

 

 

自己紹介とか.

 

はじめに

自分は早稲田大学基幹理工学部数学科二年の"かまあげ"というものです。

名前は特に何も考えずに決めたので、由来とかは覚えてないんですが、一応丸亀製麺は好きです。でもシラスは生の方がちょっと苦くて美味しいと感じてます。

Wathematicaというサークルに所属しています。自主ゼミとかやってるサークルです。

wathematica.github.io

なんで突然ブログなんか、とこれだけ見た方はお思いになられるでしょうが、まあ次の記事を見ていただければなんでこんなものを作ったか分かるかなと思います。一応文章を何も考えずに羅列することは好きです。

 

学問系ですきなこと

数学全般が好きです。なんというか、「下から」というか、「基盤から」というか、ともかく厳密に論を進めないと気が済まないたちなので(といいつつ、人に伝える時はまずひどく感覚的に伝えてしまう癖がありますが...)、物理はまだしも化学とかは怖さがぬぐえない(?)感じです(受験の時に丸暗記していたのが悪影響を及ぼしている?)。なのであんまり好きになるほど勉強してないです。

最近読んでる本は雪江代数1とか、杉浦解析とか、久保川統計とか、そのあたりです。

一応量子力学とかにも興味はあるんですが、いかんせん上に述べたような性分の持ち主なので、「関数解析やらないと無理そう」って思ってます。でも他学部聴講でふわふわ解析力学を取りました。慣れって怖いですね。

 

学問系以外に趣味とかないの?

音楽が好きです。昔は音ゲーとかやってたので、LeaFさんとかかなり好きです。Doppelgangerとかは僕の音楽観?を変えたといってもよいです。こういう音楽が存在していたのか...という。

同じノリで廻転楕円体さんとかも好きです。

要するに予想を裏切ってくれる音楽が好きです。同じことをやられるとつまんないとなってしまう(洋楽とか向いてない)。

最近はSilentroomさんとか、Frumsさんとか、Sobremさんとか好きです。

Sobremさんは早くソロアルバムを出してほしい。マジで。

 

J-POPでいうとindigo la Endさんとか、ヒトリエさんとか。神僕もよく聞きます。歌詞に共感はしていませんが...(笑)

 

このブログで何する予定なの?

基本的にサークルのイベントとか用になると思います。まあそれ以外Twitterだと思う。知らんけど。公開したら需要のありそうで、かつ数学とか物理とか、そういう自分が興味のあるような事柄について書くと思います。今一応書く予定があるのは数学基礎論と解析的整数論です。